生徒から「一人の作家」へ育つ瞬間(長崎絵画教室)
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これ一体どうやって作ったの?生徒から「一人の作家」へ育つ瞬間の秘密
「これ、一体どうやって作ったの?」
アトリエで彼女の作品群を前にしたとき、思わずそんな言葉が口を突いて出ました。
長崎絵画教室として長く指導を続けていますが、彼女はもう当教室の生徒さんという枠組みには収まりきりません。独自の表現世界を確立し、自立してオリジナル作品を生み出し続ける、立派な「作家」さんです。
この域まで到達すると、こちらが何か技術的な指導をするというよりも、むしろ私自身が彼女のエネルギーから刺激を受けることの方が多くなります。
指導するというより、刺激を受ける領域へ
彼女が現在取り組んでいる作品たちを見ていただくとよくわかります。
アクリル絵の具や岩絵具、時には質感の異なる様々な素材を一つの画面に重ね合わせ、複雑で奥深いマチエール(絵肌)を作り出す「ミクストメディア」の手法が用いられています。
この独自の技法によって生み出される画面は、ただ美しいだけでなく、見る者の視覚的な知性を強く刺激します。
作品に込められた手数、つまり一つ一つの表現の「質」が凄まじいのはもちろんですが、それ以上に圧倒されるのは、生み出される作品の「量」です。
「質より量」を体現する凄まじい手数と数
彼女はもともと完成度を極める作家です。
しかし、上達の過程において、よく「質より量」という言葉が使われます。
最初から完璧な一つの作品を作り上げようと立ち止まるのではなく、まずは圧倒的な数の制作をこなすことで、結果として手が洗練され、質そのものが劇的に引き上げられていくという法則です。
彼女の制作態度は、まさにこの言葉すら体現しています。
安直なテクニックや表面的な見栄えに逃げることなく、ひたすらに手を動かし、積層的に絵の具を支持体にぶつけ続ける。
その膨大な積み重ねが、一生モノの表現力へと繋がっているのです。
一歩上の世界の作家さんに育つ鍵
そして何より素晴らしいのは、彼女が持つ心理的なバランス感覚です。
自分の生み出す作品を心から愛し、情熱の赴くままに制作の奥深くへと入り込んでいく主観的な没入状態。
これを「アソシエイト」と呼びます。
彼女はこの熱量を持ちながらも、同時に、まるで他人の作品を評価するかのように、自分の絵を冷徹に突き放して観察する視点も併せ持っています。
この、キャンバスから一歩引いて全体のバランスや構造を客観的に見つめ直す冷静な状態が「ディソシエイト」です。
熱く入り込む主観(アソシエイト)と、冷たく突き放す客観(ディソシエイト)。
制作中に行われるこの二つの視点の切り替えこそが、大人の心のブレーキを外し、単なる習い事の生徒から、一歩上の世界で活躍する「作家」へと育つ最大の鍵なのだと、彼女の背中が教えてくれています。
